Yaffee's Whisky Blog

ウイスキー好きの料理人が書くウイスキー中心のブログ。

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【ウイスキー初級向き】麦芽(モルト:malt)ってそもそも何?


モルト

 

ウイスキー初級向き企画。今回は最も重要な原料麦芽モルト:malt)」についてみていこうと思います。今回も最後に料理人目線のところを載せてみました。

すみません、最後に行くにつれてマニアックになってます。そこはご了承ください。

 

 

 

そもそも麦芽モルト:malt)って何?

 

麦芽モルト:malt)とはその名の通り「麦の芽」ようは麦で作ったもやしのようなもの。

 

実際にはもやしのようなものといっても根を使うわけではなく、根は取り外し種の部分を乾燥させて使います。

 

なぜわざわざそのような処理を行うかというと、ウイスキーコニサーの試験なら「糖化酵素を活性化させ、溶けの良い状態にするため。」という回答で正解だと思いますが、確かに今はウイスキーやビール業界に限らず、パンや麦芽糖の生成にもこの麦芽モルト:malt)の糖化酵素が使われるのが一般的なのでその通りだと思います。

 

 

 

しかしそもそもなぜ麦芽モルト:malt)というものが生まれたかまで考えていくと……。

 

麦芽モルト:malt)自体は古代から使われていました。(ウィキ先生曰はく)

 

古代のパンには小麦粉より麦芽モルト:malt)を粉末にしたものが使われていたようです。それはパンを焼くにはそれなりの燃料が必要。しかし麦芽モルト:malt)は極端に言うと水分を含ませて乾燥させれば完成。それだけで長期保存性と体への消化の良い状態となるのでかなり重宝されていたのだと思います。また粉末にして水で練って、少し焼けばすぐ食べられるものになるだろうし、圧倒的に酵母が元気になります。(実際に麦芽モルト:malt)入りパンと麦芽モルト:malt)なしパンの発酵の早さの実験は過去にしたことがあります。)

昔は培養酵母どころか酵母という概念すらなく自然に発酵するの待ち。その中で酵母が元気に働くようになる麦芽モルト:malt)はパン作りに必須アイテムだったのかもしれませんね。

 

先人の知恵や経験からこの考えに至り、麦芽モルト:malt)というものが人の生活になじんでいったのだと思います。

 

大麦=麦芽モルト:malt)?大麦と麦芽モルト:malt)の違い

 

よくこの間違いをしている人がいます。正確にはウイスキーやビールの世界では麦芽モルト:malt)=大麦麦芽を指すことが多いですが、大麦だけでなく例えば小麦にも小麦麦芽があったり、ライ麦にもライ麦麦芽があったりと、麦芽モルト:malt)自体は状態を指す言葉です。

 

大麦について

 

大麦は英語で[barley:バーレイ]。モルトとは正確に区別されています。

 

その大麦の中にも二条大麦六条大麦というものがあって、

簡単に説明すると「二条大麦は2列に麦の実がなりますよ、六条大麦は6列に麦の実がなりますよ」という違い。

 

二条大麦

 

しかし用途は結構変わってきます。

二条大麦(通称:ビール麦)はウイスキーやビールによく使われます。

それは粒自体が大きいためデンプン含有量が多く、またエキス分が多く得ることができます。そしてたんぱく質が少ないからビールやウイスキーの製造に適しています

 

ん?たんぱく質が少ないとなぜウイスキーやビールの製造に適しているの?と思うかもしれませんが、たんぱく質が多いと麦汁にしたときに濁りやすくなります

濁った麦汁では酵母が100%の実力が出せず、酵母由来のフルーティな香りが生まれにくいです。ただ逆にまろやかな味わいにもなりますのでどれが「正解」というのはありません。ちなみに「ホワイトビール(ヒューガルデンブルームーンみたいなビールのジャンル)」は原料が小麦麦芽。小麦麦芽は大麦麦芽よりたんぱく質が多く、その分アミノ酸が多く生成されるので、乳酸っぽいというかちょっとヨーグルトなニュアンスが出てきて、それがこのビールの醍醐味みたいになっています。

ほかにもウイスキーで言ったらブレアアソールがあえて濁った麦汁で発酵・蒸留していたり……。

 

 

六条大麦

 

反対に六条大麦はよく食用や麦茶に使われることが多いです。よくスーパーで見る押し麦などは六条大麦が多いです。

それ以外にはグレーンウイスキーアメリカンウイスキー(バーボン、ライウイスキーテネシーウイスキーなど)の原料を糖化させる糖化材として使われます。

それは二条大麦よりたんぱく質が多い分、酵素力が強いからです。

この話をすると酵素からになりますが、酵素というのは簡単にたんぱく質の一つ。そのたんぱく質が多いということは酵素量も多いということです。

 

しかし、六条大麦単体には二条大麦よりでんぷんが少なく、エキス分が少ないので、結果アルコール換算すると少なくなってしまいます。

 

特にウイスキーはアルコール換算で多く作れる品種というのを追い求めてきました。そこでたどり着いたのが二条大麦であり、今の品種です。

 

古代品種が見直されている?

 

これも最近になって見直されていて、古代品種の大麦で作ると

アルコールはあまりできないけど、めっちゃいい薫りするね!みたいなことがあって古代品種を使ったウイスキーや地元産大麦を使ったウイスキーがリリースされています。

筆頭がブルックラディ スコティッシュバーレイ スプリングバンク ローカルバーレイ だと思います。

 

 

麦芽モルト:malt)の作り方

 

最初のほうにざっくり説明しましたが、

大麦は収穫されてからすぐに麦芽モルト:malt)へと加工されるかといわれたらNOです。

一般的に大麦は休眠期間というのが必要で、この休ませる作業を行わないと

早く芽を出そうと張り切るやつ、頑張らないやつなど不均一に発芽してくるそうです。

幼いころに庭によく種を植えていましたが、休ませる期間があった植物の種は発芽しやすかったように思います。

 

この休眠期間の後にドライ&ウエットという作業があります。

それは水に数時間浸して、水からあげて通気させるという作業をくりかえります。

これにより麦の中に十分な水分を均一に含ませることができるからです。

 

 

ついに乾燥となりますが、この時に常に攪拌させないと腐ってしまったり、不均一に発芽したりします。今では大きな乾燥機のようなもので自動的に攪拌させながら発芽させることができますが、昔は人の手で攪拌させながら発芽させていたそうです。ウイスキー用語でいうと「フロアモルティング」という製法で、今でも数は少ないですが行っている蒸留所はあります。ボウモア ラフロイグ が有名ではありますが、すべてフロアモルティングで行う稀な蒸留所が スプリングバンク だけです。

 

麦芽モルト:malt)の種類

 

麦芽モルト:malt)の種類はどちらかというとビール製造のほうの知識。これまでのウイスキーではあまり麦芽モルト:malt)の種類というのは大々的に公開されてきていません。しかし最近になってモルトの種類にもこだわりだしているところが多く出てきたり、もともとクラフトビールを作っていた会社がウイスキー業界に参入してきたりとウイスキー業界にも麦芽モルト:malt)の種類の話は聞くようになっていきました。

そこで簡単にビールでメジャーな麦芽モルト:malt)についてみていこうと思います。

 

 

・ペールモルト

いわゆるペールエールを作るときに使う麦芽モルト:malt)。

焙煎を行わない「淡色麦芽」とも呼ばれるもので長時間、低温で乾燥します。

ノンピートのウイスキー用の麦芽モルト:malt)もほとんどがここに入ると思います。

 

・ラガーモルト

いわゆるみんなが一般的にビールと呼んでいるラガー・ピルスナー用の麦芽モルト:malt)

入手しやすい麦芽モルト:malt)の中で最も淡い色をしています。ただこのモルトの難点はオフフレーバーのもととなる成分を多く持っているようです。そのため麦汁の煮沸時間を長くする必要があるのだとか。麦汁の煮沸を行わないウイスキーにはあまり向かなさそうですね。

 

・ライトローストモルト

高温で軽く焙煎した麦芽モルト:malt)。

まだこの焙煎度合いでは酵素活性は生きているようで、弱いですが糖化はできるようです。あまり甘味を増やすことなく、モルトの特徴を加えやすいそうです。

 

・スモークモルト

その名の通り燻製させた麦芽モルト:malt)。ウイスキーのピーデッドモルトはこのジャンルですね。ほかにもチップなどの木材で燻したモルトを使ったラオホビールという燻製ビールにも使われます。

余談ですが、アイラで造られるその名も「アイラエール」というものがあります。確か今までにキルホーマンとボウモアがあったと思いますが、調べたら売り切れでした。

2年前のビアフェスで飲みましたが、強い酸味と薫香が特徴的なビールでした。

どこかで見つけたらぜひ飲んでみてください。

 

・カラメルモルト(クリスタルモルト

甘味やボディ、カラメルのような香りを与えてくれますが……。

この麦芽モルト:malt)は水分を含ませるところまでは通常と同じです。しかし水分を含ませた後、ゆっくり加熱を行うそうです。すると糖化酵素で糖分ができますが、出来上がった糖がカラメル化していきます。このカラメル化した糖は酵母が食べることのできない多糖類(デキストリン)という成分。

 

つまりこの麦芽モルト:malt)だけでは発酵させることができません。

 

・トーストモルト

高温でローストさせた麦芽モルト:malt)。

アンバーエール、ブラウンエールなどに使われます。香ばしい風味と甘味中心に味が強いので、少量のみ使うようです。この麦芽モルト:malt)自体に酵素力はありません。

 

・ローストモルト

トーストモルトをより焦がした麦芽モルト:malt)

スタウトやポーターなどに使われます。

チョコレートモルトやコーヒーモルトもこの中に含まれます。味わいへの影響が強いので、最近ウイスキーでも使われています。この麦芽モルト:malt)にも酵素力はありません。

 

 

(参照:世界に共通するビールのつくりかた大辞典)

ちょっと変わった麦芽モルト:malt)を使ったウイスキー

 

グレンモーレンジィ シグネット

 

グレンモーレンジィ シグネットはチョコレートモルトを使用したウイスキーとして有名です。

それ以外にも様々な型破りを行ったウイスキーで、単一畑、デザイナーズカスクなどなど今ではモーレンジィの基本となっているのをレギュラー商品で始めたのもこのウイスキーだといわれています。

洗礼されたグレンモーレンジィの味わいに深いチョコレートのようなコクと長期熟成の原酒がもたらす長い余韻。深い世界へといざなってくれます。

 

ウエストランド

 

ウエストランドアメリカ・シアトルにある100%モルトウイスキーを作る蒸留所。アメリカはスコットランドアイルランドのように100%モルト(大麦麦芽)でなくでもモルトウイスキーとして販売することができます。その中で伝統を重んじて100%モルトにこだわり、革新的な挑戦も行うこの蒸留所が造るウイスキーには

 

ペールモルト、ピーデットモルト、ペールチョコレートモルト、ブラウンモルトミュンヘンモルト、エクストラスペシャモルトワシントン州ピーデットモルトなど

 

麦芽モルト:malt)が使われています。

このアメリカンオークは今までのウイスキーと違ったチョコレート感を感じさせてくれます。

まだという人はぜひ味わってみてください!

 

 

料理人目線の意外な麦芽モルト:malt)の使い道

 

ここからは完全に過去に僕が実験した独自のモルトの使い道です。

 

ソースとして使う

 

しかし「売れない」との判断で実験までで終わってしまったので、レシピまで出していないです。そこはご了承ください。

 

まず麦芽を粉砕して水と混ぜてしばらくぐつぐつと煮だして「麦芽の出汁」のようなものを作ります。

別の鍋で白ワインをぎりぎりまで煮詰めて置いてそこに鶏の出汁を加えてまた煮詰めていきます。

濃度が出てきたらすりおろしリンゴを入れまた煮詰め、はちみつで甘味を整え、麦芽の出汁

を加えてまた更に煮詰めてバターで乳化させれば完成です。

豚や鶏のロースト、グリルみたいな料理のソースとして使えます。

 

タケノコの灰汁とり!??

 

もう一つが実験の為に購入したモルトでやってみたことで

多分他にやったことのある人はいないと思いますが、タケノコの灰汁とり用のぬかの代わりとして使えました。

まあ「モルトのほうがある。」ってご家庭のほうが少ないと思いますが、意外と灰汁はしっかりとれます。かといってモルトの味は移りませんが……。

 

燻製材としてモルトを使う。

 

ちなみに燻製材としてモルトを使うことはできます。しかしほんと短時間で焦げたコメの香りになりますので、使うときは熱燻で煙が出てから30秒がベストだと思います。

そのくらいが香ばしい麦茶の香りという感じですね。

どこかのレストランでは瞬間燻製でモルトを使うというレシピを見たことがありますが、その時はカラメルなども一緒に燻製材とするレシピでした。

 

もし挑戦してみたい方はやってみてください!

 

themaltshop.biz

ここまで読んでくれた方、マニアックな僕のブログについてきてくれてありがとうございます。今後ともこのような記事を書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。


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