本日もお越し頂きありがとうございます。
ウイスキー好き料理人Yaffeeです。
今回のテーマは『樽』!!
ウイスキーと樽は切っても切り離せないのも。
このことはなんとなくウイスキー初心者の方でもわかるかなと思います。
しかし、『樽』についてはわからないことが多いのではないでしょうか?
樽の材質は?
樽って消耗品?それとも使いまわすもの?
樽熟成中に起きることって?
などなど疑問に思うことは多いと思います。
ウイスキーに最も影響するのが樽(Cask)といわれています。
『樽』について理解できると、ウイスキーがより楽しくなると思います!!
そこで今回は意外と知らないウイスキーの樽(Cask)に詳しく解説させていただきます!
ウイスキーの『樽』を知って、よりウイスキーライフを楽しみましょう!!
ウイスキーでいう『樽とは?』『カスクとは?』
ウイスキーなどの液体を詰めるために作られた木製の入れ物で、ウイスキーの熟成には欠かせないものです。
皆さんがよく知っている樽のあの形には、
・液体が漏れにくく堅牢さ
・長い期間の貯蔵にも耐えられる強度
・転がすことで運びやすい利便性
などといった効果があるそうです。
昔の人の知恵が詰められた形なのだと思います。
なぜウイスキーで樽・カスクが木製なのか
「泡盛」の熟成は甕で行うことが多いですよね?
他にもステンレスタンクで熟成されるお酒というものありますが、ウイスキーがなぜ木樽なのでしょうか?
その一番の理由は
『木材・樽材の成分をお酒に抽出させるため。』
無色透明な蒸留後のお酒が、樽熟成させることで樽材成分などが溶けこみ琥珀色のウイスキーへと変貌していきます。
するとバニラの香りだったり、レーズンやチョコのようなフレーバーが付き、複雑で魅惑的なウイスキーになるわけです。
二番目に
『木製の樽だと、「樽が呼吸をする」から。』
樽が呼吸?って謎に思うかもしれませんが、ステンレスタンクでも甕でもできないことがこの「樽の呼吸」。
木材を組み合わせて作る木樽・カスクは、気温や湿度によって微妙に大きさが変化します。
暑い時には木材が膨張し堅牢になり、寒い時には収縮して少しだけ隙間ができるそう。
寒いときに外気が樽内に入ってきます。
海の近くの熟成庫では潮のフレーバーがつきますが、その理由がこの「樽の呼吸」だそうです。
短期熟成でおいしいウイスキーのできるバーボンや温かい地域のウイスキーは寒暖差が重要となり、
10年以上の長期熟成させるスコッチなどは気温の変化の少ない地域が熟成に向いているといわれています。(蒸留所ごとに考えは違いますが……)
つまりその土地独特のフレーバーなどを原酒に付加することができるため、木樽が使われています。
樽は消耗品???
『樽・カスク』は50年以上使えるものです。
ウイスキーではないですが、ブランデーやシェリー酒などでは100年以上も使われている樽もあります。
バーボンウイスキーでは『新樽』の使用が義務ですが、スコッチやアイリッシュ、ジャパニーズなどほかの地域のウイスキーは基本的にバーボンの空き樽やワインの空き樽が使われることが多いです。
なぜこのようにほかのお酒が入っていた樽がウイスキーの熟成に使われるかといいますと、
・ほかのお酒(バーボンやシェリー酒、ワインなど)の個性がウイスキー内に溶け込むから。
・原酒自体の味の強さがないと「新樽」では樽材成分が出すぎてしまうから。
・そもそもウイスキーの熟成自体が「空き樽」で行われてきたから。
などの理由が挙げられると思います。
スコッチに注目すると、基本的に5~10年周期で熟成が行われるそうです。
バーボンやほかのお酒が入っていた新樽の次の樽を
『1stフィル(1空き樽)』といいます。
この樽は、樽にほのかに残ったほかのお酒のフレーバーと木材成分が出やすいです。
多くのウイスキーのキーモルトだったり、アクセントにつかわれることが多いそうです。
その次の樽が
『2ndフィル(2空き樽)』
1stフィルの樽で熟成させた原酒を払い出した後の樽で、この樽を熟成に使うとより穏やかなフレーバーとなりやすいです。
『3rdフィル(プレーンカスク)』
ここまでくると樽材成分やほかのお酒のニュアンスはほとんど現れてきません。
樽からの影響がほとんど出ずに熟成させることができるので「プレーンカスク」と呼ばれていたりします。
多くはグレーンウイスキーの熟成に使われることが多い樽となります。
ただこの樽も「チャー(内側をバーナーで焦がすこと)」、「トースト(遠赤外線で焙煎していくこと)」を行うと、
「再生樽・再活性化樽・リチャードカスク」として再び樽材成分を抽出することができ、樽として復活します。
こうして使いまわしていき、60~70年程度(6~7回ぐらい)利用されて役目を終えます。
つまりウイスキーの樽は消耗品ではなく、何回も再活性され大事に使われているのです。
樽熟成の魅力
樽熟成の魅力は語りつくせません(笑)。
樽熟成によって無色透明の荒々しいお酒が琥珀色の魅惑的なウイスキーへと変わっていく。
樽(Cask)の中でウイスキーがどのように変化するのか、どのような味になっていくのかは、味を見るまで正確にはわかりません。
ウイスキー用語で樽熟成中の変化を表現する言葉に「天使の分け前:エンジェルズシェア」という言葉があります。
ウイスキーは樽が呼吸することで中の原酒が蒸散していき、熟成年数が進めば進むほど原酒がどんどん減っていきます。
スコットランドで年間約2~3%ぐらい減るそうです。
減った分ウイスキーだどんどんおいしくなるので、昔の人は
「天使が飲んでいき、その分け前としてウイスキーをおいしくしてくれている。」
と考えたそう。
そこから「天使の分け前:エンジェルズシェア」という言葉が生まれました。
(反対においしくなくなったのもは悪魔に飲まれたということで、「悪魔の取り分:デビルカット」といわれています……)
シェリー樽とバーボン樽って何?
特にスコッチウイスキーで「バーボン樽」と 「シェリー樽」 という言葉をよく見るのではないでしょうか。
特にスコッチウイスキーは大きくバーボン系ウイスキーとシェリー系ウイスキーの2つにわけることができます。
スコッチでは新樽を使うことは少ないです。
基本的にもともと別のお酒が入っていた空き樽を熟成に使います 。
その空き樽の多くはバーボン樽とシェリー樽です。
シェリー樽はシェリー酒の空き樽で、伝統的にスコッチで使われてきた樽 です。
そしてバーボン樽はバーボンウイスキーの空き樽のことで、現在主流 となっています。
シェリー樽
ウイスキーの熟成にシェリーの空き樽を使うのは、もともとイギリス人の貴族たちの間でシェリー酒が人気だったから 。
今でもシェリー酒の輸出先として常に上位です。
イギリスの各地の港には、シェリーの輸送用の樽がいっぱいあったといわれています。
スコッチ密造酒時代、製造したウイスキー(当時はまだ無色透明の蒸留酒)が摘発されないようにシェリーの空き樽に隠していたそう。
隠していおいた無色透明のウイスキーを数年後開けてみたら、琥珀色になっていて香り高くまろやかな口当たりのウイスキー へと変貌していました。
これが「ウイスキーに熟成」という考えが生まれたストーリーです。
このストーリには諸説あります。
その前にはウイスキーを熟成させる考えは伝わっていたともいわれていますが、政府への抵抗の証 だったウイスキーにはこのストーリーが馴染んでいたようですね。
今ではシェリー酒の規則として木製の樽に詰めて輸出されることができなくなったため、シェリー樽の入手が難しくなりました 。
そのため、シェリーシーズニングというウイスキーの蒸留所自ら用意した樽をシェリーの熟成庫でシェリーを詰めて2~3年「シーズニング」を行うそうです。
(ここで詰めていたシェリーはシェリー酒として使うことができないので『熟成』ではないそうです。)
シェリー樽で熟成させたウイスキーは、
レーズン、紅茶、チョコ、干しイチジク、アーモンド、クルミ、ウーロン茶、ココア、みりん、小豆など
のフレーバーがつくことが多いです。
シェリー樽でおすすめのウイスキー
グレンファークラス 12年
グレンドロナック 12年
バーボン樽
バーボン樽がスコッチの主流となったのは、バーボンが新樽か使用してはいけないという規則が生まれてから。
1933年にアメリカの禁酒法は廃止されました。
しかしウイスキーは熟成を待たないといけないので、無理やり熟成させたようにしたまがい物や偽物 が横行したそうです。
このことが問題となったので、すぐにウイスキーに関する法律が制定されました。
この法律により、一部を除くすべてのアメリカンウイスキーに新樽を使用が義務化されました。
つまりバーボン樽の空き樽が大量にできることになり、バーボンの空き樽なら安く入手できる ようになります。
今ではさらに輸送コストや解体組み立ての直しなどのコストを抑えるためにバーボン樽自体も少し小さくなっています。
スコッチに限らず、様々なお酒の樽熟成に使われています。
味わい的にはシェリーカスクよりスムースでライトに仕上がりやすい です。
一般受けしやすく、人気は高くなっています。
バーボン樽で熟成させたウイスキーは
バニラ、バナナ、ココナッツ、はちみつ、メープルなど
のフレーバーが特徴的だと思います。
バーボンカスクでおすすめのウイスキー
グレングラント 10年
グレンモーレンジィ オリジナル
それ以外に樽(Cask)
ワインカスク、ブランデーカスク
ワインの熟成に使われた空き樽のことで、有名産地・有名品種のものが多いです。
多いのは赤ワインですが、ソーテルヌなどの甘口ワイン、ほかにもシェリーと同じように酸化熟成タイプのワイン(マルサラ、ポートなど)も使われます。
どのワインが入っていたかによって味わいがかなり変わってくるので、可能性の幅が広く追加熟成時の樽として人気です。
ちなみに今の「山崎」のキーモルトは赤ワインの樽で寝かせた原酒だそうです。
ワインカスクでオススメ!!
ジョニーウォーカー ワインカスクブレンド
ジョニーウォーカー ワインカスク ブレンド 40% 700ml KB
マルス モルテージ 越百 ワインカスクフィニッシュ
ラムカスク
最近ラムの人気が徐々に高くなっているからかもしれませんが、よくラムカスクで追加熟成を行ったウイスキーをよく見ます。
で、個人的にはカラメル、黒糖、コーヒーといったフレーバーが共通してあるように感じます。
あとまろやかな味わいになっているものも多いと思います。
ラムカスクでオススメ!
ティーリング ラムウッド
ティーリング スモールバッチ ラムカスク フィニッシュ ブレンデッド アイリッシュウイスキー 46度 700ml
グレンフィディック ファイヤー&ケーン
日本未入荷商品 グレンフィディック ファイアー&ケイン 700ml 43度 エクスペリメンタルシリーズ第4弾 スコッチ スペイサイド シングルモルト Glenfiddich Fire & Cane
カルヴァドスカスク
2019年にあったスコッチウイスキーの法改正で使えるようになった樽 です。
実際の最近リリースされ始めていますが、今後カルヴァドスカスクのウイスキーはもっと出てくると思うので要チェックです!
また同時にテキーラカスク、焼酎カスクも使えるようになったのでまたスコッチウイスキーの幅が広がりそうですね。
ウイスキーのラベルでよく見る「ウッドフィニッシュ」って何?
先ほどの樽の説明でも出てきた「追加熟成 」という言葉これこそ「ウッドフィニッシュ」です。
多くの場合はバーボン樽で熟成させた後、シェリーやワイン、ラムなどの樽で数か月~1年寝かせる という方法です。
その方がバーボン樽で熟成させ、全体的な味の飲みやすさを演出した後、ほかのお酒の個性をつけた方がバランスがとりやすいからじゃないかなと思います。
元々はグレンモーレンジィが始めました。
それから瞬く間に広がっていって今では主流になっています。
樽(Cask)材にはこの木材!
スコッチウイスキーまたはアメリカンウイスキーでは熟成に使っていい樽の材質が決められています。
それはオーク(楢)製 のもの。それ以外の材木は使うことができません。
簡単に説明するとオークが樽の材質の最も適しているからです。
オーク材には強度があり、水漏れのしにくい特徴があります。
数あるオーク(楢)材の中でもウイスキーの樽に多いのはホワイトオーク とコモンオーク です。
主にホワイトオークはバーボン樽に多く、コモンオークはシェリー樽に多いです。
また日本原産のミズナラの人気も高くなっています。
それぞれに特徴があって味わいも変わってくるので、ぜひウイスキーを飲むときに樽の材質にも注目してみてください!!
面白い発見ができると思います。
アイルランドや日本のウイスキーでは他の材木を使うことができるので、「桜カスク」とか「栗カスク」などもチャレンジしている蒸留所もあるそうです。
樽詰めアルコール度数は63%が最適!!
ウイスキーの樽詰め度数は63%が最適 だといわれています。
一言でいうと、木の材質の成分が溶けだすのに、水分とアルコールのバランスがちょうどいいから 。
木材の成分はアルコールによって分解・抽出・溶解していきます。
しかし高すぎるアルコールでは木材の少し残っている水分と反発しアルコールが浸透していかなかったり、水に溶けやすい成分を溶かすことができなかったりします。
反対にアルコール度数が低いと樽に水分が吸収されていってしまったり、成分の抽出が不十分になったりするそう。
つまり63%前後であれば、十分に樽の持ち味を生かすことができるそうです。
そのためアルコール度数を調節して樽に詰める蒸留所が多いです。
ただし!!!
ブルックラディ蒸留所は63%に加水することを否定し、樽詰め時に加水を行わないそうです。
実際、ブルックラディもおいしいウイスキーを数多くリリースしていますので、「どっちが正しい。」というのはないのでしょう。
ただ美味しければいいのだと……。
2019年、スコッチウイスキーの熟成に使用できる空き樽が定義化!!
「スコッチウイスキーの熟成に使えるオーク樽の種別とは何か」という問い合わせが殺到したため改正に踏み切ったそうです。
以前までは『伝統的に使用されてきた空き樽のみ』可能だったみたいですが、
・いったいどこまでが伝統的なのか?
・ワイン樽でもボルドーやブルゴーニュなどがOKで、チリ、オーストラリアなどのワイン樽はなぜNGなのか?
・スピリッツの空き樽の線引きは何?
近年のウイスキーブームによってこういった議論が多くなったそうです。
そこで、新しく空き樽について定義することで使用できる樽の明確にしました。
これによりスコッチウイスキーに使える樽の幅が広がることになります。
書き加えられた定義は下記のとおりです。
スピリッツは、オークの新樽や、ワイン(無発泡性ワインおよび酒精強化ワイン)、ビール(エール)、スピリッツ類などの熟成に使用したオーク樽に入れて熟成されるものとする。ただし下記の酒類を熟成したオーク樽は除外する。
- 原料に核果(サクランボや梅のような果物)が含まれるワイン、ビール(エール)、スピリッツ
• 発酵後に果実、フレーバー、甘味が加えられたビール(エール)
• 蒸溜後に果実、フレーバー、甘味が加えられたスピリッツ
• 上記の製法を伝統的に採用しているワイン、ビール(エール)、スピリッツ使用する樽の種別に関わらず、完成された製品はスコッチウイスキーの伝統的な色、味、アロマの特徴を示していなければならない。樽に入っていた内容物は、スコッチウイスキーまたはスコッチウイスキーとなる予定のスピリッツを容れる前に完全に排出されなければならない。(※スコットランドの飲料に関する検証機構:技術指導書(スコッチウイスキーの検証)2019年6月改定)
つまり、既存のポート、マディラ、ワイン、コニャック以外にも、テキーラ、焼酎、カルヴァドスなども使用可能となります。
しかしキルシュや梅酒のようなもの、リキュール類やジンは使用できないということです。
多分ウイスキーと呼べなくなってしまうような味になってしまうからですかね?
本坊酒造さんの「ラッキーキャットハナ」は梅酒カスクだそうです。結構おいしかったですが、スコッチでは認められないようです。
樽のことを知ってからウイスキーのラベルを読んでみると、また更にウイスキーが面白くなると思います。この機会にウイスキーをより深いところまで知ってみるのはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回のお話いかがだったでしょうか。
また今回の記事が、面白かった、ためになったと思っていただけたら嬉しいです。
また次回もよろしくお願いいたします。
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