ブルックラディ Bruichladdich蒸留所について
ブルックラディ/ブルイックラディ Bruichladdichはゲール語で「海辺の丘の斜面」という意味。
ブルックラディなのかブルイックラディなのか資料によって変わってきますが、これは日本語の読み方の違いなのでお好きな呼び方で大丈夫です。
この蒸留所は
・ブルックラディ(ノンピート)
・ポートシャーロット(ヘビーピート 30~40ppm)
・オクトモア(ウルトラヘビー 80~300ppm)
の3タイプのウイスキーを製造しています。
「ブルックラディ」はピートのクセがほとんどなく、アイラ島では珍しいタイプのウイスキーです。
2001年の再操業以来、ワインで一般的な「テロワール」の考えをウイスキーに取り入れた蒸留所であり、新しいことにチャレンジし続けている「革命児」です。
今回はこのブルックラディの革命的なストーリーやこだわりの製法についてみていこうと思います。
ブルックラディ Bruichladdichのストーリー
ブルックラディの創業は1881年と意外と歴史のある蒸留所。
創業者はハーヴェイ3兄弟(資料によっては兄妹)。
彼らはグラスゴーにある当時スコットランド最大規模の蒸留所・ダンダスヒルの経営者であり、最新鋭のアイラモルト蒸留所としてブルックラディを建設しました。
創業当時から刺激的なアイラモルトを特徴としたブレンデッドウイスキーを多くリリースし、人気を博していたそうですが、1929~1937年に生産停止を余儀なくされます。
そこから幾度となくオーナーが変わりますが、1994年JBB社(ホワイト&マッカイの親会社)がインバーゴードン社から買収。
直後に閉鎖となり、その後ウイスキーがつくられることはほとんどありませんでした。
再稼働は不可能といわれ、蒸留所消滅の道をたどる運命かと思われたとき、ブルックラディの救世主が現れます。
それが、
ワインやウイスキーボトラーズとして活躍していた
マーク・レイニエーとサイモン・コフランのマーレイマクダビット社と、
元ボウモア蒸留所で働いていた「ウイスキー界の伝説の男」と呼ばれている
ジム・マッキューワンです。
両者が中心となってJBB社からブルックラディを買収。
2001年春に再オープンしました。
この蒸留所の復活劇は「ウイスキー・ドリーム」という本にもまとめられています。
よかったら見てみてください!!
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ブルックラディの復活劇に世界中のメディアが取り上げていましたが、中でも最も注目されたのが「テロワール」の概念をウイスキー界に持ち込んだことです。
「テロワール」とは、原料・こだわり・気候・風土などその土地ならではの性格を取り込んでいくことで、ワインや紅茶、コーヒーではメジャーな言葉です。
ワインビジネスを長年行ってきたマークとサイモンは、ウイスキー業界に「テロワール」の概念がないことに驚いたそう。
スコッチウイスキーという名前は大々的に知れ渡っていたのに、原料の大麦は多くはイングランドやアイルランドなど“外国産”がほとんどでした。
今でも大規模になると海外産の大麦を使うことが多いそう。
マークとサイモンは初めにすべての原料をスコットランド産にすることから始めていきました。
はじめに本土含めたスコットランド産の大麦のみを使うようにし、アイラ島で大麦の栽培が可能かどうか調べ始めます。
するとはるか昔にはアイラ島でも大麦が栽培されていて、19世紀以降そのほとんどが畜産に変わってしまったことがわかりました。
マークとサイモンは一軒一軒農家を回って説得していったそう。
今ではブルックラディでの使用量の約半分ぐらいをアイラ産の大麦で賄っています。
他にもこの蒸留所はヴィクトリア時代の蒸留所設備そのまま、現在主流のコンピューター制御でのウイスキー造りは導入しなかったそう。
昔ながらの製法でウイスキーがつくられています。
また蒸留所の設備はボトリングまで一貫して行えるようになっています。
さらに今フロアモルティング設備(自家製麦設備)も検討中なのだとか。(2023年に稼働を目指しているそう。。)
2012年にフランスのレミーコアントロー社が買収した後もこのこだわりは貫いています
個人的に好きなストーリー!!『イエローサブマリーン事件』
ブルックラディは2001年の再建以降驚くほど多彩な商品を展開しています。その種類なんと200種越え!!
そのほとんどが限定品です。
3D、インフィニティ、ブラッカースチルなど様々ありますが、中でも個人的に好きなストーリーが『イエローサブマリーン』です。
2005年アイラ島全体を騒がせるとある事件が起きました。
地元の漁師がいつのように漁をしていたところ、謎の物体が発見します。
その物体をよくよく確認してみると、潜水艦だったそう。
どこかの軍関係のものらしく、港まで曳航し引き上げました。
これにアイラ島内が大騒ぎとなります。
写真を撮るもの、ビートルズのイエローサブマリーンをかけて飲み食いするもの、海外からの侵略を唱えるものなど……
このことを地元新聞が取り上げたところ、今度は英国中が大騒ぎとなりました。
ついに英国海軍が口を割ります。この潜水艦は英国海軍が極秘に作っていた最新鋭の潜水艦で、実験中に行方不明になっていたものだったそう。
英国海軍の英知の結晶といえるものだったのでなかなか口を割らなかったそうです。(笑)
海軍がこの潜水艦を引き上げに来た際、ブルックラディは1991年物のボトル6本を船長に進呈したそう。
その時にこのラベルに発見された潜水艦の写真を張り、記念としてとして限定リリースも行ったそうです。
すごく思い切ったことしますよね。。(笑)
ストーリーは好きなのですが、まだ飲んだことなく、これからも飲めるのかどうか。。。
ここだけの話、このウイスキーがまだあるよっていう情報求めてます!(笑)
ブルックラディ Bruichladdichのこだわりの製法
ブルックラディは前記したようにテロワールへのこだわりが強く、また大麦の品種にもこだわっています。
現在の優良品種であるオプティック種からコンチェルト種、さらに古代品種のベア種の仕込みも行っています。
このベア種で仕込みを行うとアルコールの収集量は減ってしましますが、古代品種独特の香りや現在の品種には出せない味というものが出てくるそうです。
最近、試験的にアイラ産ライ麦と大麦を使ったライウイスキーの仕込みも行っているみたいです。
一仕込みに7tの麦芽(ベア種は5.5t)を使い、糖化していきます。
糖化槽は創業当時から使っているオープン式のもの。これで3万5000ℓの麦汁を得ます。
発酵槽はオレゴンパイン製のもので計6基。
時間は72~110時間と仕込みによって変えているそうですが、やや長めですね。
ポットスチルはアイラ島でも珍しい細身なストレートヘッド型のもので、ここからアルコール度数68%のニューメイクを得ます。
この蒸留所の面白いところが、このニューメイクのアルコール度数そのまま樽詰めされるところ。
通常ウイスキーの樽詰めは63%に加水調節して樽詰めされます。
これは63%が樽の成分を最も抽出しやすい度数だからだそうです。(詳しい解説はこちらをクリック!!)
ただブルックラディは68%ぐらいで樽詰めされます。
これは伝説の男ジム・マッキューワンの考えで、
「我々はウイスキーを熟成させるのであって水を熟成させるつもりはない。」
のだそうです。
だからこそこの蒸留所の繊細でエレガントな特徴が生まれているのかもしれないですね。
ブルックラディのメインの使用樽はバーボン樽ですが、アメリカンオークの新樽なども使うことがあり、また限定製品用に様々な樽を使用しているそうです。
そして10年以上も前からブルックラディ蒸留所はボトリング設備を持っていて、アイラの水を使って加水調節してからボトリングを行っています。
ラインナップ
ブルックラディ クラシックラディ Bruichladdich The Classic Laddie
ブルックラディ蒸留所の最もスタンダードなウイスキー。
ノンピートながらややスモークの香りも感じられるかもしれません。
青リンゴのような爽やかさに心地いいバニラフレーバーとエレガントで繊細な味わい。
そしてスパイシーで潮気の効いた余韻が楽しめると思います。
ストレートでも飲み口が軽く親しみやすいですが、ハイボールや水割りでもより爽やかな味わいを楽しむことができ、初心者でも面白い一本だと思います。
ポートシャーロット 10年 Port Charlotte 10年
ブルックラディ蒸留所のヘヴィーピートタイプのボトル。
最近ボトルリニューアルし、よりピートやスモーク感を感じるような重厚感のあるデザインになっています。
癖のある強めのピート香にベリー系のフルーティーさ、やや青リンゴのような味わいもあります。
リッチなテイストですが、ブルックラディ蒸留所の繊細な一面も楽しめると思います。
【あす楽】【包装不可】 ブルックラディ(ブルィックラディ ブルイックラディ) ポートシャーロット 10年 50度 箱付 700ml
オクトモア 10年 3rdエディション Octomore 10年
ブルックラディ蒸留所で作られている世界で最もピートの効いたタイプのウイスキー。
今回の3rdエディションはフェノール値107ppmとこのブランドの中では中程度ですが、ガツンとしたパンチの効いたピート香にブルックラディのエレガントで繊細な味わいがついてきて、飲んでみると香りより飲みやすく、楽しみやすい味わいだと感じられると思います。
かなりお値段はお高いですが、ぜひ最強ピートを味わってみたい方はお試しください!!
ウイスキー ブルックラディ オクトモア 10年 3rdエディション 700ml (77969) 洋酒 Whisky(77-7)
蒸留所データ
創業……1881年
創業者……ハーヴェイ3兄弟
オーナー会社……レミーコアントロー社
年間生産能力(100%アルコール換算)……150万ℓ
仕込み水……オクトモア農場の湧き水
使用麦芽……スコットランド産大麦100%(うち42%程度がアイラ産)
発酵槽……オレゴンパイン6基
発酵時間……72~110時間程度
ポットスチル……初留釜2基、再留釜2基
ミドルカット……Alc.68%
生産区分……アイラ島