「カスクフィニッシュ」「○○フィニッシュ」
という言葉をウイスキーの説明やボトルなどで見たことはないでしょうか?
カスクフィニッシュは樽熟成の比較的新しい手法で、現在リーズナブルなボトルから高級銘柄まで幅広い銘柄で採用されています。
一体カスクフィニッシュとは、どういう手法なのでしょうか。
特徴と魅力を解説しつつ、おすすめの銘柄を紹介していこうと思います。
カスクフィニッシュとは?
カスクフィニッシュは樽熟成の最後に別の樽へ移し替える手法で、その時に使用される樽の個性を後から付与することができることが特徴です。
冒頭でも書いたようにウイスキーの製造工程の中では比較的新しく、現在ボトラーズや限定ボトルを中心に多くの銘柄で採用されています。
オフィシャルのフラグシップボトルとは違った味わいが楽しめるとして、ウイスキーファンからも人気が高いです。
カスクフィニッシュの特徴
カスクフィニッシュの特徴は、最後に使用された樽の個性がウイスキーに付与されることです。
例えば、バーボン樽で10年ほど熟成したのちシェリー樽でフィニッシュしたとします。
すると、バーボン樽由来のバニラ香・バランスの良さは保ちつつ、シェリー樽由来のコクや渋みなど奥深い味わいを付与することができるのです。
カスクフィニッシュの期間は、数か月から数十か月とウイスキーの熟成の中では短い期間となっています。
そのため使われる樽は……
- 小さめの樽
- 個性の出やすい樽
など。
熟成樽のサイズが小さい方が樽の影響を受けやすい傾向があります。
カスクフィニッシュにはオクタブ(シェリーバットの1/8)やクォーター(バレルの1/4)といった容量45~60ℓほどの樽が使用されることが多いです。
通常は
- シェリー樽ならバット(容量500ℓほど)やホグスヘッド(容量250ℓほど)
- バーボン樽ならバレル(容量200ℓほど)
また、ファーストフィル(別のお酒が払い出してから最初に使われる樽のこと)が個性が出やすい樽が使用されることが多いです。
カスクフィニッシュ用に樽を用意する業者も多く、コラボなどで実現するボトルもあります。
スペイサイドブリュワリーとのコラボです。
もともとカスクフィニッシュはグレンモーレンジィ蒸留所が初めて市場に投入しました。
そのためグレンモーレンジィは「樽のパイオニア」とも呼ばれています。
カスクフィニッシュの魅力
カスクフィニッシュの魅力は、多彩な樽で熟成されたウイスキーの味わいが楽しめることだと思います。
シェリー樽が有名で、
- フィノ
- アモンティリチャード
- オロロソ
- パロコルタド
- ペドロヒメネス
- モスカテル
などシェリー酒の中でもさまざまな樽がカスクフィニッシュに使用されます。
例えば、極甘のペドロヒメネスやモスカテルカスクフィニッシュは蜜のような甘みが付与されます。
オロロソのように酸化熟成をさせた辛口シェリー酒ならレーズンのようなコクのある味わい得られやすいです。
また最近は、
- IPA(ホップを大量に使用したエールビール)
- カルヴァドス(リンゴのブランデー)
- コニャック
- ソーテルヌ
- ラム
- テキーラ・メスカル
など
さまざまな樽がウイスキーのカスクフィニッシュに使用されています。
今まで熟成に使用されてこなかった樽が、カスクフィニッシュの登場により使われるようになりました。
カスクフィニッシュによって、ウイスキーはより多彩な個性を持つ蒸留酒となったと言えるでしょう。
さらに、最近リーズナブルな価格帯のウイスキーでもカスクフィニッシュの製品がリリースされるようになりました。
2000円台のウイスキーでもカスクフィニッシュをしている銘柄は数多くあります。
多彩な個性のウイスキーが安い価格帯でも楽しめることは大きな魅力と言えるでしょう。
ところが、カスクフィニッシュはオリジナルの原酒との相性が大事で実験的なボトルもあります。
だからこそ、リーズナブルな価格でも初心者~玄人まで楽しめる銘柄は多いのだと思います。
おすすめのシリーズ
カスクフィニッシュはそれぞれの樽による味わいの違いがわかると興味深く感じられるでしょう。
シリーズで味わってみるとその違いがわかりやすいと思うので、まずはおすすめのシリーズから紹介させていただきます。
グレンモーレンジィ
カスクフィニッシュを語る上で欠かせないのが「グレンモーレンジィ」
オリジナルは、デザイナーズカスクという樽の材質となる木材からグレンモーレンジィがこだわり抜いたバーボン樽(実はジャックダニエルの樽)が使われています。
そこから……
- ラサンタ(オロロソシェリー樽フィニッシュ)
- キンタ・ルバン(ルビーポートワイン樽フィニッシュ)
- ネクタドール(ソーテルヌワイン樽フィニッシュ)
といったカスクフィニッシュシリーズが誕生しました。
最上級のオロロソシェリー樽を使用したグレンモーレンジィのカスクフィニッシュシリーズの一つ。
ナッツのような温かみと華やかさがより際立った一本です。
価格帯 | 7000~8000円 |
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アルコール度数 | 46% |
容量 | 700ml |
特徴 | オロロソシェリーフィニッシュのモーレンジィ |
原産国 | スコットランド |
アロマ | 4.5 |
フレーバー | 4 |
余韻 | 4 |
ルビーポートワインの樽でフィニッシュさせた一本。
フローラルかつフルーティな印象とミントやチョコレート。
ナッツとほんのりウッディな余韻が残る一杯です。
価格帯 | 7000~8000円 |
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アルコール度数 | 46% |
容量 | 700ml |
特徴 | ルビーポートでフィニッシュしたグレンモーレンジィ |
原産国 | スコットランド |
アロマ | 4 |
フレーバー | 4 |
余韻 | 4 |
完璧すぎるウイスキー『グレンも―レンジィ』の中でも特に気品あふれる一本。
ごく甘のワイン『ソーテルヌ』の樽でフィニッシュ。
桃や梨のような上品なフルーツ香になめらかな舌触りが特徴です。
価格帯 | 7000~8000円 |
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アルコール度数 | 46% |
容量 | 700ml |
特徴 | ごく甘ソーテルヌの樽で |
原産国 | スコットランド |
アロマ | 4 |
フレーバー | 4.6 |
余韻 | 4.7 |
デュワーズ イノベーションシリーズ
デュワーズ イノベーションシリーズは、各国のユニークな樽でデュワーズをフィニッシュさせたシリーズです。
現在(2023年8月時点)で5種類ほどリリースされいます。
- カリビアンスムース(ラムカスクフィニッシュ)
- イリーガルスムース(メスカルカスクフィニッシュ)
- ポルトガルスムース(ルビーポートワインカスクフィニッシュ)
- フレンチスムース(カルヴァドスカスクフィニッシュ)
- ジャパニーズスムース(ミズナラカスクフィニッシュ)
限定リリースのため、すでにECサイトではプレ値となってしまっているものがありますが、2000円台でユニークな樽のデュワーズが楽しめることで人気を博しております。
ラム樽でフィニッシュさせた数量限定のデュワーズ
8年以上熟成させた原酒を厳選し、モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドした後、さらに再度熟成。
そしてそのあとでラム樽でフィニッシュさせた一本となっています。
価格帯 | 2000~3000円 |
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アルコール度数 | 40% |
容量 | 700ml |
特徴 | ラム樽でフィニッシュさせたデュワーズ |
原産国 | スコットランド |
アロマ | 4 |
フレーバー | 3.3 |
余韻 | 3.5 |
メスカル(メキシコのアガベを使用した蒸留酒)の樽でフィニッシュさせた珍しいウイスキー。
デュワーズのイノベーションシリーズの一つで、スモーキーさと若草のような青々とした香りがほかのデュワーズシリーズにはない個性ではないでしょうか。
価格帯 | 2000~3000円 |
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アルコール度数 | 40% |
容量 | 700ml |
特徴 | メスカル樽を使用した珍しいウイスキー |
原産国 | スコットランド |
アロマ | 3 |
フレーバー | 3 |
余韻 | 3 |
ルビーポートワインの樽でフィニッシュさせたデュワーズ。
チェリーとバニラ、アプリコットのような印象が楽しめる一本です。
価格帯 | 2000~3000円 |
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アルコール度数 | 40% |
容量 | 700ml |
特徴 | ルビーポートワインの樽でフィニッシュさせたデュワーズ。 |
原産国 | スコットランド |
アロマ | 4 |
フレーバー | 4 |
余韻 | 4 |
現在、日本で発売されたボトルはこの3本のみです。
海外では「フレンチスムース」と「ジャパニーズスムース」がリリースされておりますが、日本ではまだ未発表となっています。
個人輸入などを利用すれば日本でも購入することはできるようです。
おすすめの銘柄
カスクフィニッシュの中でも特におすすめしたい銘柄をまとめました。
世界で一番売れているシングルモルト「グレンフィディック」
そのオフィシャルラインナップの中でも「実験」シリーズとなっている「エクスペリメント」の第一弾!!
2016年にリリースされた一本で、地元ビア醸造所とコラボしてできました!
IPAビールの樽で3か月追加熟成させた一本。
IPAの爽やかさが楽しめるグレンフィディックです!!
価格帯 | 6000~7000円 |
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アルコール度数 | 43% |
容量 | 700ml |
特徴 | グレンフィディックの実験シリーズ |
原産国 | スコットランド |
そしてホップの心地よくも爽やかな余韻が心地よい一杯です!!
アロマ | 4.7 |
フレーバー | 4.9 |
余韻 | 4.9 |
アイルランドのウエストコーク蒸留所がリリースしている数あるラインナップのうちの一つ。
IPA(ホップを大量に使用したエールビール)の樽でフィニッシュさせたブレンデッドウイスキーで、爽やかな香りとナッツのようなフレーバー、軽い口当たりが特徴です。
価格帯 | 3000~4000円 |
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アルコール度数 | 40% |
容量 | 700ml |
特徴 | リーズナブルなIPAカスクのウイスキー |
原産国 | アイルランド |
アロマ | 4 |
フレーバー | 4 |
余韻 | 4 |
2020年に新発売した日本限定のシーバスリーガル。
希少なミズナラカスクを使ったもので日本の「クラフトマンシップ」とシーバス社の「アート・オブ・ブレンディング」の融合が楽しめます。
生姜、アンズ、梅、クローブ、ダークチョコレートの印象。妖艶な美の余韻に引き込まれます。
価格帯 | 7000~8000円 |
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アルコール度数 | 43% |
容量 | 700ml |
特徴 | アート・オブ・ブレンディング |
原産国 | スコットランド |
繊細で爽やかなフルーティさのあるウイスキー!!
和の花を連想させる華やかな味わいです!!
アロマ | 3 |
フレーバー | 3 |
余韻 | 4 |
テネシーウイスキーの名門蒸留所”ジョージディッケル”の奇抜なウイスキー!!
タバスコを熟成させていた樽で熟成させたウイスキーです!!
厳密にはフレーバードウイスキーとなり、国によってはウイスキーとは名乗れないものです。ところが本格的なウイスキーの味わいは残しつつ、しっかりとタバスコのニュアンスも楽しめます!!
価格帯 | 5000~6000円 |
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アルコール度数 | 35% |
容量 | 750ml |
特徴 | タバスコの樽で熟成させたウイスキー |
原産国 | 日本 |
アロマ | 3.8 |
フレーバー | 3.8 |
余韻 | 3.5 |