蒸留所データ
創業……1843年
創業者……ウィリアム・マセソン
オーナー会社……モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン
年間生産量(100%アルコール換算)……600万ℓ
仕込み水……ターロギーの泉
使用麦芽……ノンピート
発酵槽……ステンレス12基
発酵時間……60時間程度(モロミAlc8%)
ポットスチル……初留釜6基、再留釜6基
ミドルカット……Alc.72~60%
グレンモーレンジィ(Glenmorangie)蒸留所について
グレンモーレンジィはスコットランドゲール語で「静寂の谷」を意味。
グレンモーレンジィには様々な二つ名があります。
「樽のパイオニア」、「香りのデパート」、「感覚の冒険へ」、「究極のエレガント(グレンモーレンジィ18年)」、「スコットランドで最も愛されているウイスキー」、「樽の魔術師」などなど。
そして最も語られているのが「完璧すぎるウイスキー」です。
いかにも大げさで、外国の方が好きそうな二つ名・キャッチコピーですが、グレンモーレンジィを飲んで「完璧すぎるウイスキー」を納得できていない方を知りません(個人的にですが)。
なぜグレンモーレンジィが「完璧すぎるウイスキー」と呼ばれているのか、そのストーリー、こだわりを見ていこうと思います。
「完璧すぎる」ストーリー
1843年、当時バルブレア蒸留所をもっていたウィリアム・マセソンが古びたビール醸造所を改造してグレンモーレンジィ蒸留所を作りました。
グレンモーレンジィの特徴の一つにスコットランド一背の高いポットスチルがあげられます。
この背の高いポットスチルからグレンモーレンジィ独特の原酒が生まれてきています。
実はこのスチルは創業当時の資金難からポットスチルの新調ができず、仕方なく使用したジン用のスチルだったそう。
しかしポットスチルから生まれるウイスキーは予想外の好評を得たそうです。
輝かしいグレンモーレンジィにも酷評、営業停止の過去が……
1880年代ウイスキー研究家のアルフレッド・バーナードがグレンモーレンジィを訪れたとき「世界一古びた原始的な蒸留所」「遺跡みたいなもの」と大酷評だったのだとか。
その後グレンモーレンジィに出資者が現れ企業化し、この時に建物の改築のされたそうです。
さらに
1931~36年、アメリカ禁酒法と世界恐慌の影響
1941~44年、第二次世界大戦による原酒不足
と、2度営業を停止しています。
今でこそスコットランド国内外で大人気(世界シングルモルトランキング4位、スコットランド国内では人気No.1)のグレンモーレンジィも、このように専門家からの酷評や2度の営業停止を経験しているようです。
そしてこの時のグレンモーレンジィはどちらかというとブレンデッド用原酒メインだったそう。
ハイランドクイーンやジェームズ・マーティンズなどに原酒の供給を行っていたそうです。
シングルモルトとしてブレイク!!
1970年代になり、10年もののシングルモルト用の原酒熟成に取り掛かります。
これこそグレンモーレンジィがトップシェアブランドとなる決め手になったようです。
当時ブレンデッド人気からウイスキー蒸留所が異常にできていた時。
80年代にはモルト原酒多可によるウイスキー不況で多くの蒸留所が閉鎖となっています。
しかし、グレンモーレンジィはシングルモルト用原酒に着手していたとこで、1990年後半これらの原酒を使ったシングルモルトをリリース。
国内ベストセラーとなりました。
ちなみにこの成功からでしょうか。
グレンモーレンジィはボトラーズ、ブレンデッド業者にほとんど原酒を提供しないことで有名です。
ただどうしてもグレンモーレンジィが使いたかった業者は「ウエストポート」という名前で、99.9%グレンモーレンジィのティースプーン一杯だけほかの原酒をブレンドしたウイスキーを販売しています。
もし「ウエストポート」を見つけたら飲み比べてみてください。
2004年にフランスのLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)社が3億ポンドという巨額の資金で買収を行います。
この時にはグレンモーレンジィ社はアードベッグ蒸留所も持っていたのでともにLVMH社所有となりますが、それ以来類まれなる事業展開を続けています。
グレンモーレンジィのキャッチコピー・販売の上手さ、ブランド力の魅せ方は、世界的ブランドのルイ・ヴィトン社ならではかもしれなせんね。
「完璧すぎる」グレンモーレンジィ3つのこだわり製法
仕込み水はスコットランドでも珍しい硬度190の「中硬水」
基本的にスコットランドの仕込み水の多くは軟水です。
中硬水の仕込み水を使っているところでも、日本基準で中硬水ってだけで海外の基準では軟水に指定される蒸留所のほうが多いです。
しかし、グレンモーレンジィの仕込み水は海外の基準でも「中硬水」とされるほど硬度の高い湧水を使っています。
以前は「ターロギーの泉」というところから仕込み水をひいていたようですが、今ではその近くの「ケルピーの泉」という同じ水源の水を使っています。
ミネラル分豊富な仕込み水から華やかで軽い口当たりながら厚みあるグレンモーレンジィの魅力の一つが生まれているのだと思います。
最も背の高いポットスチル!その高さはキリンと同じぐらい!?
グレンモーレンジィといえば、グレンモーレンジィ自慢のポットスチルとキリンの並ぶ写真が有名です。
もともとはジン用の中古ポットスチルを使用したところ、思わぬ素晴らしい香味が生まれたことからこのポットスチルがグレンモーレンジィの伝統となっています。
なんとその長さはキリンの背丈と同じ5.14mなのだとか。
ただキリンになじみのない日本人にとってちょっとわかりにくいかもしれないですね。
大体2階建ての建物ぐらいの高さみたいです。
この背の高いポットスチルから軽やかで非常にピュアな味わいの原酒が生まれてくるそうです。
それには「還流」という現象がカギを握っているのです。
ここだけの話ですが、グレンモーレンジィは一度イベントの為に本当にキリン(ジェフリーちゃんという名前だそう)を連れてこようとしたのだとか。
キリンの輸送には莫大なコストと時間がかかるため断念したというちょっと面白い噂話があります。
信じるか信じないかはあなた次第ですが……。
「樽のパイオニア」「樽の魔術師」などの異名が付けられるほど樽へのこだわりは特に強い!!
独特の仕込み水、ポットスチルから生まれてくるエレガントな原酒と厳選した樽のマリアージュこそグレンモーレンジィ最大の個性だと思っています。
グレンモーレンジィの熟成樽は「デザイナーズカスク」という独自の樽を使用しています。
アメリカのミズーリ州でホワイトオークの原木を買い付け、天日乾燥で24カ月間乾燥させます。
多くの樽(特にバーボン樽)は、人工乾燥の木材を使うことが多いです。
しかし人工乾燥では木材の本当の魅力を100%引き出すことはできませんでした。
天日乾燥の木材の品質に目を付けたグレンモーレンジィは、最高にオーク樽の魅力を引き出せる天日乾燥はどの期間かを地道に実験していたそうです。
6か月、12カ月、24カ月と……。
そうして編み出された結論が24か月だったそう。
このこだわりの材質で作った樽に「ジャックダニエル」を詰め、数年間熟成させます。
そうしてできた「ジャックダニエル」の空き樽にグレンモーレンジィを詰めて10年以上熟成させます。
しかも多くの蒸留所が樽を3回ほど使いまわすのに対して、グレンモーレンジィは2回までしか使わないという徹底ぶり。
これがグレンモーレンジィの最もベーシックなシングルモルト「グレンモーレンジィオリジナル」となり、その他グレンモーレンジィ製品の土台になっているようです。
ベーシックな熟成にこだわるグレンモーレンジィですが、多くの蒸留所が行っている「ウッドフィニッシュ」という技法を始めて行ったのも、グレンモーレンジィだそうです。
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こだわりのデザイナーズカスクとウッドフィニッシュを活用し、魅力的な様々なウイスキーをリリースしています。
3つでは語りつくせないグレンモーレンジィの魅力の根源
ほかにもグレンモーレンジィは自社農園(カドボール農園)の大麦を使用や、シングルモルトとは思えない絶妙なバランス感のブレンディング技術など、あげていけばきりがないほどグレンモーレンジィにはこだわりが詰まっています。
その最たる根源は
伝統を守り、革新をおこし続けるグレンモーレンジィ蒸留所の精鋭の職人チーム「Man Of Tain(テインの男たち)」
そして多彩な発想で伝統的なシングルモルトに「イノベーション」を与え続ける『ウイスキーの冒険者』
蒸留・製造の最高責任者ビル・ラムズデン博士
だと思います。
ビル・ラムズデン博士は大学在学中のパーティーでグレンモーレンジィ10年を飲んで、ウイスキーの魅力に取りつかれてしまったそう。
ヘリオット・ワット大学で博士号を取得後、モルトウイスキーの世界へ
グレンモーレンジィとアードベッグの蒸留・製造の最高責任者となってからは多くのモルトファンを驚かせてきました。
そのアイディアのもとには、
伝説的なミュージシャンやトップアスリート、超一流シェフなど、様々な方の最高のパフォーマンスから刺激を得て、自分のアイディアとしてウイスキーで表現しているのだとか。
そしてビル博士のアイディアをグレンモーレンジィ製品として形にしていくのが精鋭の職人チーム「テインの男たち」です。
この精鋭職人チームの力により「スコットランドで最も愛されるシングルモルト」だけでなく、「最も多くの賞を受賞したシングルモルトウイスキー」にもなっています。
精鋭の職人チームが世代を超えて愛されるグレンモーレンジィの礎を築いき、ビル博士の発想が多くのモルトファンからの期待や支持を離さないのだと思います。
そしてこれこそグレンモーレンジィの魅力のもとではないでしょうか。
ラインナップ
グレンモーレンジィオリジナル
デザイナーズカスクを使用し、こだわりぬいた「完璧すぎる」ベーシックウイスキー。
吹き抜けるバニラを柑橘の香りに軽やかな口当たりと深みのある余韻はその名に恥じない名酒です!
グレンモーレンジィ キンタ・ルバン
ルビー・ポートワインカスクでフィニッシュ。ビターチョコにミントの香り滑らかな口当たりはあなたを骨抜きにしてしまうかも……。
グレンモーレンジィ ラサンタ
辛口のオロロソと甘口のPX二つのシェリー樽でフィニッシュ。芳醇で濃厚な味わいが特徴で、ナッツの温かみのある味わいが楽しめます。
グレンモーレンジィ ネクター・ドール
極上の甘口ワイン、ソーテルヌの樽に寝かせたグレンモーレンジィ。桃のような上品な甘みに濃厚で滑らかな舌触り。リッチな味わいで、まるで高貴な女性のようなウイスキーです
グレンモーレンジィ 18年
「究極のエレガント」と謳われる絶品のウイスキー。芳醇な深みとエキゾチックな不思議な魅力。深い余韻はまさにエレガントなひと時を演出してくれます。
グレンモーレンジィ シグネット
グレンモーレンジィが長年の研究を重ねて作り上げたプレミアム・シングルモルト。
チョコレート麦芽を使ったウイスキーで、深い深い余韻が楽しめます。
最後まで今回の記事を読んでいただきありがとうございます。
グレンモーレンジィの話いかがだったでしょうか。
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