ウイスキーの中で圧倒的な存在感を誇るスコッチ。
スコットランドで作られていることからスコッチウイスキーを呼ばれ、長い歴史とその味わい深さから世界中で親しまれています。
ところが、スコットランドで作られていればすべてスコッチウイスキーと呼べるわけではないのです。
「スコッチウイスキー」には細かい定義があります。
では「スコッチウイスキー」と呼ぶためには、どんな定義があるのでしょうか。
本日もお越しいただきありがとうございます。ウイスキーを愛する料理人Yaffeeです。 (@TW0GPYU3yMS7N3o) 今回のお話は「ウイスキーの定義」について ウイスキー[…]
今回は、細かく、そしてわかりやすく解説していこうと思います!!
スコッチウイスキーの定義
「スコッチウイスキー」は、英国の法律で以下のように定められています。
- 水・イースト・麦芽(モルトウイスキー)又はその他の穀物(グレーンウイスキー)のみを原料とすること。
- スコットランドの蒸留所で糖化・発酵・蒸留を行うこと
- アルコール度数94.8%以下で蒸留すること
- 容量700ℓ以下のオーク製の樽で熟成させること
- スコットランド国内の保税倉庫で3年以上熟成させること
- 水とスピリッツカラメル以外の添加は禁止。
一つ一つ解説していきましょう。
原料は、水・イースト・穀物のみ
スコッチウイスキーと呼ぶためには、水・イースト・麦芽またはその他の穀物のみで作らないといけません。
糖化のために麹(こうじ)を添加したり、穀物以外の材料を入れたりすることは論外です。
日本でも基本的には麹を入れた場合「焼酎」となりますが、スコットランドでも過去に麹(こうじ)をウイスキーに使おうとしたケースがあったそうです。
この原酒は、「ウイスキー」と呼ぶことができないと判断されました。
他にも、穀物の代わりに一部だけ糖蜜やフルーツなどを使った場合も「ウイスキー」と呼ぶことはできなくなります。
⇨【入門編】ウイスキーってなに??初心者にわかりやすくイラスト付きで解説!!
スコットランドの蒸留所で糖化・発酵・蒸留
スコットランドの蒸留所で糖化・発酵・蒸留を行わないといけません。
例えばビール工場に発酵まで委託したとしましょう。
その後、蒸留所で蒸留したとしても、「スコッチウイスキー」を名乗ることができなくなります。
必ず蒸留までの一連の流れを、ウイスキー蒸留所で行わなくてはいけないというルールがあります。
同じグループ会社内でも製造途中の糖化液やモロミを移動させることはできません。
ちなみに、蒸留所内にビール工場がある場合は、問題なくビール工場のラインを使うことができるみたいです。
「エデンミル」という蒸留所が施設内にビール醸造所があり、ビールやジン、スコッチウイスキーを作っています。
蒸留上限アルコール度数は94.8%
ウイスキーの蒸留時のアルコール度数は94.8%までと決められています。
蒸留酒は蒸留時のアルコール度数が低いほど、原料の成分が含まれやすいです。
アルコール度数94.8%以上で蒸留すると、原料由来の味わい・香りが残らないそうです。
スコッチウイスキーは、原料由来の味わい・香りを大事にしています。
特にシングルモルトウイスキーは、熟成しても残るほどの個性が必要となります。
反対に、「ジン」に使われるニュートラルスピリッツは蒸留時のアルコール度数96%以上。
ジンはそのニュートラルスピリッツにボタニカルと水などを混ぜ、再び蒸留し香りをつけていきます。
ベースとなるお酒自体にあまり個性が必要ないからかもしれません。
⇨「ボタニカル?」「クラフトジン?」今人気急上昇中のお酒『ジン Gin』とは?
ウイスキーの蒸留上限アルコール度数の94.8%は原料由来の個性を残せるギリギリの度数なのでしょう。
樽はオーク製で容量が700ℓ以下
ウイスキーの熟成に使える樽は700ℓ以下のオーク製の樽。
樽は大きければ大きいほど熟成が遅くなり、小さいほど熟成が早いです。
700ℓ以上の樽ではなかなか熟成が進まないそうで、樽の最大容量が定められたのだと思います。
そして樽の材質はオーク(楢)製。もともと古くから樽にはオーク材が使われてきました。
オーク製の樽の特徴は……
- 強固で液漏れしにくい。
- ウイスキーの熟成に望ましい香味を得ることができる。
スコッチウイスキーでは、100%オーク製の樽でないと熟成させることはできません。
それ以外の木材を使うと、スコッチウイスキーではなくなります。
さらに、スコッチウイスキーの多くはほかのお酒が入っていた樽で熟成されることが多いです。
2019年にスコッチウイスキーに使える樽の種類にも細かい決まりができました。
スピリッツは、オークの新樽や、ワイン(無発泡性ワインおよび酒精強化ワイン)、ビール(エール)、スピリッツ類などの熟成に使用したオーク樽に入れて熟成されるものとする。ただし下記の酒類を熟成したオーク樽は除外する。
• 原料に核果が含まれるワイン、ビール(エール)、スピリッツ
• 発酵後に果実、フレーバー、甘味が加えられたビール(エール)
• 蒸溜後に果実、フレーバー、甘味が加えられたスピリッツ
• 上記の製法を伝統的に採用しているワイン、ビール(エール)、スピリッツ使用する樽の種別に関わらず、完成された製品はスコッチウイスキーの伝統的な色、味、アロマの特徴を示していなければならない。これらの条件は、以下で説明する後熟工程においても同様である。樽に入っていた内容物は、スコッチウイスキーまたはスコッチウイスキーとなる予定のスピリッツを容れる前に完全に排出されなければならない。
(※スコットランドの飲料に関する検証機構:技術指導書(スコッチウイスキーの検証)2019年6月改定)
ワインやビール、スピリッツの熟成に使われていた樽ならOKとなります。
焼酎やテキーラなどの樽でも熟成させることが可能。
ところが、以下の樽はNGとなります。
- 核果(梅、アンズ、桃などのフルーツ)が含まれるワイン・ビール・スピリッツ
⇨キルシュ、梅酒、アプリコットワインなど - 発酵した後にフルーツや甘味、フレーバーが添加されたビール
⇨フルーツビール、ランビックなど - 蒸留後にフルーツや甘味、フレーバーが添加されたスピリッツ
⇨ジン、リキュール類など
合わせて読みたい⇨ウイスキーの味の決め手となる樽(カスク)!樽熟成の魅力に迫る
スコットランド国内で3年以上熟成
スコッチウイスキーと呼ぶためには、スコットランド国内で3年以上熟成させる必要があります。
ところが、スコットランド国内の英国内国歳入関税庁(HM Revenue& Customs)により登録を受けた保税倉庫であれば、どこの倉庫で熟成させてもOKです。
例えば、
- 蒸留所Aで作られたウイスキー原酒を蒸留所Bの熟成庫で熟成させた。
- アイラ島で作ったウイスキー原酒をグラスゴーの保税倉庫で熟成させた。
これらは許可されています。
水とカラメル(着色用)以外添加できない
水やカラメル(着色料)以外をウイスキーに添加することは許されていません。
逆を言うと、着色料としてカラメルを添加することは許されています。
ウイスキーは一つの樽ごとに味も違えば色合いも違います。
同じ味・同じ色に仕上げるためには、どうしても着色しなくてはいけないときがあるのです。
特にブレンデッドウイスキーでは着色されていることが多く、着色されてないウイスキーには「NO-COLOR」と記載されています。
カラメルも使用できるカラメル色素には、決まりがあります。
簡単に言うと糖分を加熱しただけで作られたカラメル以外は使えません。
合わせて読みたい⇨ウイスキーは着色されていたの??筆者がおすすめしたいノンカラーのウイスキー
また、多くのウイスキー銘柄は、アルコール度数40%程度に加水調節されています。
アルコール度数40%がスコッチウイスキーと呼べる最低アルコール度数のため、そのアルコール度数まで加水調節されてボトリングされるのです。
合わせて読みたい⇨ウイスキーのアルコール度数のヒミツ!!実はアルコール度数の高い方が美味い!??
最後に……
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回のお話いかがだったでしょうか。
スコッチウイスキーの定義をおさらいすると……
- 水・イースト・麦芽(モルトウイスキー)又はその他の穀物(グレーンウイスキー)のみを原料とすること
- スコットランドの蒸留所で糖化・発酵・蒸留を行うこと
- アルコール度数94.8%以下で蒸留すること
- 容量700ℓ以下のオーク製の樽で熟成させること
- スコットランド国内の保税倉庫で3年以上熟成させること
- 水とスピリッツカラメル以外の添加は禁止
他にも
- モルトウイスキーはポットスチル(単式蒸留器)で作らないといけない。
- シングルモルトウイスキーはスコットランド国内で瓶詰しないといけない。(ブレンデッドウイスキーは国外でもOK)
などの細かいルールもあります。
このすべての定義を満たしていないと「スコッチウイスキー」と呼ぶことはできません。
このように細かい定義が定められているのは、スコッチウイスキーとしての品質を法で守るためです。
世界中で愛されている「スコッチウイスキー」が、一定のクオリティ以下にならないように厳しく定められています。
定義が作られたのは、600年以上もの歴史から培った経験にほかなりません。
そしてスコッチウイスキーの法律を参考に、日本を除く世界5大ウイスキーは法で定められています。
他の国の定義を知りたい方は、過去の記事(ウイスキーの定義とは??知っておきたいそれぞれのウイスキーのルールについて再確認!)をチェックしてください。
ウイスキーの定義を知ると、より蒸留所見学やウイスキーの説明がわかりやすくなると思います。
ぜひ、ウイスキーに少しでも興味を持ったとしたらウイスキーの定義をおさらいしてみましょう!
それではよいウイスキーライフを
また次回もよろしくお願いします!
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