ウイスキーの「蒸留」について知っておきたい基礎知識

 

ウイスキーはアルコール度数が高いことは有名ですが、その理由は「蒸留」という工程を行っているからです。

果たして「蒸留」とは、どういう工程なのでしょうか?

 

この記事では、ウイスキーの蒸留をピックアップして詳しく解説していきます。

「蒸留」とは?

中学校の理科の授業で、「蒸留」を学んだ記憶がある方も多いと思いますが、簡単におさらいしていきましょう。

「蒸留」とは、沸騰する温度(沸点)の違いを利用して混ざり合っている液体を分離する方法のことです。

 

水とアルコール(エタノール)だと……水が約100℃で沸騰するのに対して、アルコールは78.3℃で気体になります。

極端に言うと水とアルコールの混ざった液体を78.3℃で加熱すれば、アルコールと水を分けることができるということです。

 

蒸留回数が増えるほど、より純度の高いエタノールを得ることができます。

スコッチモルトウイスキーでは大体2回、アイリッシュウイスキーでは3回の蒸留。

スコッチの場合、2回目の蒸留後に得られるニューポット(蒸留後の液体)は大体アルコール度数65~75%ぐらいです。

対してアイリッシュウイスキーのように3回蒸留を行っている蒸留所では、大体アルコール度数80%程度となっています。

yaffee
アルコール度数が高い=アルコール以外の成分が少ないとも言えます。
蒸留回数が増えるほどライト、減るほどヘビーな酒質となると覚えましょう。

蒸留で分けられるものは、水とアルコールだけではありません。

同じように香味成分も蒸留によって分けることができます。

 

沸点の高い成分は残り、沸点の低い成分は留液に混ざりやすいです。

ウイスキー造りは、この沸点の違いを利用して香りの選択をしている作業とも言えます。

 

少し製法や蒸留器が変わるだけで、出来上がるウイスキーに大きな影響を与えます。

  • ポットスチルを使ったか。連続式蒸留機を使ったのか
  • ポットスチルの形は?
  • どのくらいのアルコール度数でカットするのか
  • 蒸気の冷却方法は?

など

まずはその違いから一つ一つ解説していこうと思います。

 

単式蒸留と連続式蒸留の違い

お酒の蒸留には、大きく二種類あります。

単式蒸留と連続式蒸留です。

 

単式蒸留は、ポットスチルという蒸留器を使います。

ポットスチルは一回ずつしか蒸留できない伝統的な蒸留器で、原料の個性が残りやすいことが特徴。

対して連続式蒸留は連続的に蒸留できる近代的な蒸留機を使う方法で、純度の高いアルコールが得られることが特徴です。

 

ポットスチルは、モルトウイスキーの製造で使われる蒸留器で少ロット生産に向いています。

反対に連続式蒸留機は大量生産に向いていて、グレーンウイスキーやバーボンウイスキーなどで用いられています。

簡単に解説しましたが、次の見出しからより詳しくそれぞれ説明していきましょう。

単式蒸留器(ポットスチル)とは?

ポットスチルを知るポイントは……

  1. 銅で作られている
  2. 一回ずつしか蒸留できない
  3. 得られる酒質に個性が出る

 

ポットスチルは、銅で作られた大きなヤカンのような形をしてます。

モルトウイスキー蒸留所のポットスチル

写真のような形からくびれがあるものまで、各蒸留所で個性的なポットスチルが使われていますが、その構造はどこの蒸留所も一緒です。

ポットスチルの仕組みについてまとめた図です。熱源によって温められ、発生した蒸気がボディ⇨ヘッド⇨スワンネック⇨ラインアーム⇨コンデンサーの順に通っていきます。
ポットスチルの仕組み

釜に発酵もろみなどを入れて加熱。

蒸気がかぶと⇨ラインアームを通って、冷却器で冷やされて蒸留液ができます。

 

スチルの形が違うと蒸気の流れ変わるため、出来上がるウイスキーの味わいに違いが出るようです。

また、加熱方法の違いや冷却方法の違いでも酒質に大きな影響を与えます。

  • 間接蒸留……ライトですっきりとした味わいとなりやすい
  • 直火蒸留……トースティな香りとボディのしっかりとした酒質となりやすい

 

  • シェル&チューブ冷却器……早く冷えるため、ライトな酒質となりやすい。
  • ワームタブ冷却器……冷えるのが遅いため、重ための酒質となりやすい。

 

このように少し変わるだけで酒質に大きな影響を与えることがポットスチルの特性となっています。

小ロット生産向きで、蒸留所の個性が出やすいので、シングルモルトウイスキーなどで単式蒸留器で作らないといけないというルールがあるのです。

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詳しくは⇨ポットスチルの秘密を解き明かす|ウイスキーの風味に与える影響とは?

 

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連続式蒸留機とは?

連続式蒸留器は、ベルトコンベヤーで流れ作業のように作られていく工場製品のようなものだと思ってください。

複数の蒸留塔があり、その中には数十段の棚があります。

蒸留塔の下部から蒸気を送り込み、上部からモロミ送り込まれて連続的に蒸留できる構造になっています。

連続式蒸留機の仕組みについてまとめた図です。 上からモロミなど蒸留したい材料を投入し下から蒸気を出していきます。そして各段で蒸気に当てて蒸留し、最終的に上からスピリッツを得ています。

連続式蒸留機の特徴は……

  • 大量生産に向いている
  • ライトでクリーンな酒質となりやすい
  • コストを抑えることができる

 

連続式蒸留機は、単式蒸留器に比べて安価に大量生産することができます。

また、連続式蒸留機は棚の数だけ蒸留されているようなものなので、純度の高いアルコールが得られやすいです。

クリーンでライトな酒質のお酒を大量生産できることが連続式蒸留機の大きな特徴となっています。

 

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連続式蒸留機のある知多蒸留所はウイスキー蒸留所というより、「工場」のような見た目です。

知多蒸留所

けれど、知多蒸留所では常に人がチェックし微調節しながら稼働していました

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連続式蒸留機も最後には職人の勘と経験が必要みたいですね。

蒸留とウイスキーの種類の関係

蒸留の方法が変わるとウイスキーの種類は変わります。

特にモルトウイスキーは、単式蒸留器(ポットスチル)以外で蒸留されたら、グレーンウイスキーです。

 

終売になってしまった「ニッカ カフェモルト」は、日本ではモルトウイスキーですが、スコットランドなどではモルトウイスキーとして名乗ることはできません。

 

このように、蒸留器が変わるとウイスキーの種類が変わることもあるのです。

蒸留器の種類ウイスキーの種類
ポットスチルのみモルトウイスキー
ポットスチルウイスキー(アイルランド)
連続式蒸留機でも可グレーンウイスキ―
バーボンウイスキーなどアメリカンウイスキー
カナディアンウイスキー

 

少しややこしいですが、アメリカンモルトウイスキーは連続式蒸留機で作っても問題はありません。

ところが、アメリカンシングルモルトウイスキーは、ポットスチルで作らなくてはいけないというルールがあるようです。

 

難しい話ですが、蒸留方法からウイスキーの種類を見ていくのも面白いかと思います。

合わせて読みたい⇨ウイスキーの種類とは?製法ごと・国ごとの違いをウイスキー料理人が解説!!

 

まとめ

 

ウイスキーの蒸留は、大きく2種類の方法があります。

  1. ポットスチル(単式蒸留器)で蒸留される方法
  2. 連続式蒸留機で蒸留される方法

 

ポットスチルは個性が出やすくこだわりの小規模生産向きで、シングルモルトウイスキーなどの製造に用いられます。

対して連続式蒸留機で蒸留する方法は、純度の高いアルコールを得ることができ、大量生産向き。

グレーンウイスキーやバーボンウイスキーなど大規模蒸留所などで用いられています。

 

シングルモルトウイスキーは、ポットスチルで作られないとグレーンウイスキーと名乗らなくてはいけないなどのルールがあり、蒸留方法の違いでウイスキーの種類が変わることも……。

 

「蒸留」について詳しく見てみるとよりウイスキーが面白くなるのではないでしょうか。

 

それではよいウイスキーライフを!!
また次回もよろしくお願いいたします!!

 

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