ウイスキーの味わいの決め手、「樽」。
ウイスキーの熟成樽にはさまざまな種類があり、どの樽で熟成させたかによって大きく味わいが変わります。
どうしてもマニアックな世界なので、ウイスキー好きな人しか樽の種類までは注目しないでしょう。
樽の種類の違いを知ると、記載されている樽の種類と熟成年数を見るだけで味わいが想像できるようになります。
自分の好みのウイスキーが見つけやすくなり、よりウイスキーが楽しくなるはずです。
今回はそんな樽の種類についてわかりやすく、詳しく解説していこうと思います。
ウイスキーの樽の種類
ウイスキーは、何か別のお酒が入っていた樽で熟成されることが多いです。
特に
- スコッチウイスキー
- アイリッシュウイスキー
- ジャパニーズウイスキー
は、ほとんどが再使用の樽となります。
どのお酒が入っていたかによって、その後のウイスキーに大きな影響を与えるので、意図的にそういった樽が使用されているのです
実際にウイスキーの熟成に使われる樽は……
【よく使われる樽】
- 新樽
- バーボン樽
- シェリー樽
【珍しいけど使われる樽】
- ビール樽
- ワイン樽
- ブランデー樽
- ラム樽
【使えるようになった樽】
- テキーラ樽
- 焼酎樽
などなど
カスクフィニッシュの技術ができたことと樽の法律が明確になった関係で、スコッチウイスキーでもさまざまな樽が使われるようになりました。
新樽
まだ何も使われていない新しい樽のことを「新樽(ヴァージンオーク)」と言います。
バーボンウイスキーやテネシーウイスキーなどでは、新樽の使用が義務です。
新樽は樽の成分がウイスキーに出やすく、樽由来のウッディな香り・フレーバーや味わい・色が濃い原酒となることが特徴です。
バーボンウイスキーを飲んでみるとわかりやすいですが、ウッディな香りを強く感じると思います。
樽の成分が出やすいため熟成のピークが早く、熟成年数の短いウイスキーが多いです。
- 樽由来の香り・味わい・色が強く出る。
- 熟成のピークが早い。
- バーボンやテネシーなどでは使用が義務。
バーボン樽
バーボン樽は、バーボンウイスキーが入っていた樽のこと。
バーボンウイスキーは新樽しか使うことができないので、払い出した後はほかのウイスキーやラムなどの熟成樽に使用されます。
今、スコッチウイスキーを含む多くのウイスキーは、バーボン樽熟成が主流。
バニラやハチミツ、バナナのようなフレーバーが特徴です。
樽由来のクセが少なく、バーボン樽は長期熟成させるときに使われることも多い傾向があります。
また、最近「カスクフィニッシュ(追加熟成)」をする前に、バーボン樽で熟成させているケースも多いです。
- バニラ、バナナ、はちみつといったフレーバーが得られる。
- 比較的ライトな酒質。
- 多くのウイスキーがバーボン樽で熟成されている。
シェリー樽
シェリー樽は伝統的にスコッチウイスキーで用いられてきました。
シェリー酒という酒精強化ワインに使われていた樽で、ドライフルーツや紅茶、チョコ、レーズンといったフレーバーが特徴です。
シェリー樽は、樽の歴史の記事(ウイスキーの樽の歴史。琥珀色の美酒はこうして生まれた)で書いたようにもともとスコッチウイスキーで伝統的に使われてきました。
19世紀ぐらいまでは、シェリー酒は運搬用の樽に詰めて、スペインからイギリスに運ばれていました。
その運搬用の樽は、もう一度スペインに戻ることのないワンウェイ樽です。
ウイスキーの樽熟成は、このワンウェイ樽にウイスキー(当時は密造酒)を詰めて隠していたら熟成されていたという話から始まったといわれています。
今では、シェリー酒を樽で運搬することができなくなってしまいました。
そのためウイスキー蒸留所は、自分たちで用意した樽をシェリー酒の熟成庫で一定期間シーズニングしてもらってウイスキーの熟成に使っています。
シェリー樽は今も昔もシェリーの熟成に使われていた樽ではなく、少しの期間シェリー酒を入れていた樽が使われています。
シェリー酒の熟成は、継ぎ足し方式のような「ソレラシステム」という方法が採用されています。
中には百数年単位で使われる樽もあり、シェリー醸造家にとってシェリーの熟成樽は貴重なものです。
その樽をわざわざウイスキーの熟成用に譲渡することはありません。
- ドライフルーツや紅茶といった香り・味わいが得られる。
- 色が濃く出やすい。
- 特にスコッチウイスキーに多い。
ワイン樽
ワインの熟成に使われていたワイン樽。
ワイン樽にもいくつか種類があり……
- 白ワイン
- 赤ワイン
- ポートやマデイラなど酒精強化ワイン
- ソーテルヌなどの甘口ワイン
などなど
中でも特にウイスキーに使われることが多いのは、シェリー酒と同じ酒精強化ワイン。
酒精強化ワインの樽は、シェリー樽おなじようにドライフルーツや紅茶、チョコなどの深いコクのあるフレーバーが特徴です。
他にも、それぞれどの樽を使ったかによって個性が変わります。
- 赤ワイン……ベリー系のフレーバー
- 白ワイン……フレッシュな白ブドウのニュアンス
- ソーテルヌ……シャインマスカットのニュアンス
ただワイン樽自体は、メインの熟成に使われることがあまりありません。
アクセントとしてブレンドされる原酒だったり、カスクフィニッシュ(追加熟成)で使われたりすることがほとんどです。
- ベリーやブドウといったフルーティなフレーバーになりやすい。
- 個性は多彩だけど、メインの熟成に使われることは少ない。
- ブレンドのアクセントやウッドフィニッシュで使われる。
ビール樽
ビール樽熟成のウイスキーはあまりありませんが、試験的にビール樽熟成のウイスキーがリリースされることがあります。
定番リリースされているビール樽熟成のボトルは「ジェムソン スタウトエディション」ぐらい。
ジェムソン スタウトエディションは、黒ビールの樽で熟成させたアイリッシュウイスキーです。
すっきりとした味わいの中に香ばしいコクのあるフレーバーが楽しめます。
他には、IPA(インディアペールエール)の樽で熟成させたウイスキーがあり、こちらは後味に少しさわやかな苦みがあることが特徴です。
ビール樽はカスクフィニッシュ以外で使われることはほとんどありません。
- 黒ビールなら香ばしいコク、IPAならほのかにホップのニュアンス。
- ウッドフィニッシュ以外で使われることはない。
- 試験的に作られるボトルが多い。
ラム樽
ラム樽の特徴は、甘く芳醇な香りがあること。
中には、少し青草っぽい印象を受ける銘柄もあります。
主にダークラムの熟成に使われていた樽が多く、ラム酒由来の甘みやレーズンを感じさせる銘柄が多いです。
ラム樽も、ビール樽やワイン樽同様にカスクフィニッシュ以外で使われることはほとんどありません。
- 甘く、芳醇な香りのものが多い。
- ウッドフィニッシュ以外で使われることはほぼない。
- 近年、よくリリースされている。
ブランデー樽
ブランデー樽も稀にウイスキーのウッドフィニッシュで使われる樽です。
ブランデーは果物原料の蒸留酒のことで、ウイスキーの熟成樽に使われるブランデーは……
- ブドウ原料
- コニャック
- アルマニャック
- リンゴ原料
- カルヴァドス
などがあります。
ブランデーの樽で熟成させたウイスキーは、華やかなフルーティさを感じる銘柄が多いです。
ただ、ブランデー樽自体がかなりマニアックで、蒸留所などのオフィシャルリリースはあまりされません。
ボトラーズというオフィシャル以外からリリースされることが多いです。
- 華やかでフルーティな香りが付きやすい。
- あまりリリースされることがない。
- ほとんどがボトラーズでのリリース。
その他の樽
シングルモルトやクラフトウイスキーが世界的なブームとなり、ある問い合わせが増えることとなりました。
それは……
「スコッチウイスキーに使える樽の範囲はどこまで?」
ということ。
今までは、ワイン樽ならブルゴーニュやソーテルヌなどならOKでしたが、チリ産ワインの樽はなんとなくNGでした。
2019年、使用できる樽がスコッチウイスキーの法で明確になったのです。
スピリッツは、オークの新樽や、ワイン(無発泡性ワインおよび酒精強化ワイン)、ビール(エール)、スピリッツ類などの熟成に使用したオーク樽に入れて熟成されるものとする。ただし下記の酒類を熟成したオーク樽は除外する。
- 原料に核果(サクランボや梅のような果物)が含まれるワイン、ビール(エール)、スピリッツ
• 発酵後に果実、フレーバー、甘味が加えられたビール(エール)
• 蒸溜後に果実、フレーバー、甘味が加えられたスピリッツ
• 上記の製法を伝統的に採用しているワイン、ビール(エール)、スピリッツ使用する樽の種別に関わらず、完成された製品はスコッチウイスキーの伝統的な色、味、アロマの特徴を示していなければならない。樽に入っていた内容物は、スコッチウイスキーまたはスコッチウイスキーとなる予定のスピリッツを容れる前に完全に排出されなければならない。
(※スコットランドの飲料に関する検証機構:技術指導書(スコッチウイスキーの検証)2019年6月改定)
つまり、わかりやすく言うと……
【OKな樽】
- 上記した樽
- テキーラ樽
- 焼酎樽
- 日本酒樽
など
【NGな樽】
- ジンの樽
- リキュール樽
- チェリーブランデーの樽
- 梅酒樽
- サングリア樽
- フルーツビール樽
など
この決まりができてから、徐々に面白い樽を使ったウイスキーもリリースされています。
材質で分けるウイスキー樽の種類
ウイスキーの樽のほとんどは、オークが使われます。
ただ、一言でオークといっても種類はさまざま……。
そこで主にウイスキーで使われているオーク材は、
- ホワイトオーク
- ヨーロピアンコモンオーク
- ミズナラオーク
それぞれオーク材の種類を解説していこうと思います。
ホワイトオーク
ウイスキー樽によく使われる代表的な品種です。
木目がまっすぐ(通直性)があり、木材として使いやすい上に強度にも優れています。
バーボンウイスキーやシェリー、ワインなど幅広い用途で使われていて、現在スコッチウイスキーの9割はホワイトオーク製の樽だそうです。
代表的なのは「アメリカン・ホワイトオーク」
比較的安価で、液漏れしにくいです。
また、タンニンが少なくバニラ香が付きやすい特徴があります。
バニラ香のつきやすさはチャー(バーナーで内側を焦がす)ことによる影響が大きいです。
- 比較的安価で、液漏れしにくい
- タンニンが少なく、バニラ香が付きやすい。
- ウイスキーでは主流。他のお酒でも幅広く使われている。
コモンオーク
ヨーロピアンオークの代表格が「コモンオーク」です。
イギリスでは「樹木の王」「森の王」とも言われています。
古くからコニャックやワインなどの熟成に使われていて、タンニン量が多く重厚な味わいになりやすいです。
ウイスキーに使われる樽は、スペイン産のスパニッシュオークのシェリー樽が多いですが、現在は入手困難となっています。
なので、ウイスキー蒸留所各社は自分たちでスパニッシュオークの樽を用意してシェリー酒をシーズニングしています。
- 高価になりやすく、ホワイトオークより樽加工が少し難しい。
- タンニンが多く、重たい味わいになりやすい。
- ウイスキーの熟成に使われることも少なくなってきた。
ミズナラ
ミズナラは日本原産のオーク材です。
北海道、樺太、中国東北部に広く分布していて、明治時代以降は建築材としても使われていました。
ホワイトオークに比べて通直性が悪く、捻じれて生長する特徴があります。
そのため樽加工が難しく、水漏れしやすいため「水楢(ミズナラ)」の名前がついたそうです。
ミズナラは、独特な香りが付くことが特徴で、白檀(ビャクダン)や伽羅(キャラ)といった香りが付くといわれています。
- 樽加工が難しく、かなり高価になりやすい。
- 白檀や伽羅といったオリエンタルな香りが付きやすい。
- 世界中で注目されているが、ミズナラ樽自体が希少。
その他の木材(栗・桜など)
スコッチウイスキーやアメリカンウイスキーでは「オーク製」の樽をつかわないといけません。
ところが、アイリッシュウイスキーやジャパニーズウイスキー、カナディアンウイスキーなどでは、木製の樽であれば、オーク製でなくてもOKとされています。
オーク製の木材以外では、
- 栗
- 桜や山桜
- 杉
などの木材が試験的に使われています。
最後に……
ウイスキーにはさまざまな樽が使われています。
木材の種類だけでいうと
- ホワイトオーク
- コモンオーク
- ミズナラ
- その他の木材(栗や桜など)
などがあり、ウイスキーは……
- 新樽
- バーボン樽
- シェリー樽
- ワイン樽
- ビール樽
- ラム樽
- ブランデー樽
などさまざまな樽で熟成されます。
どの樽で熟成させたかによって出来上がるウイスキーの味わいが大きく変わります。
かなりマニアックな世界ではあったと思いますが、今回の話でウイスキー選びがより楽しくなってもらえると嬉しいです。
それではよいウイスキーライフを
また次回もよろしくお願いします!
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